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“強さ”は一つの能力では決まらない〜目的・年齢・状態に合わせた、自分だけの“配合”で鍛える〜

■ フィジカルは「掛け算」×「補正係数」でできている

「ジャンプ力を高めたい」「スピードで相手を置き去りにしたい」「接触プレーに強くなりたい」
こうした願いは、どれも一つの能力だけを鍛えればいいわけではありません。

なぜなら、身体能力は様々な運動特性の“掛け算”で決まるからです。
それだけではなく、
その人の年齢、既往歴、回復力といった

“現在の身体の状態”

という補正係数をかけて考える必要があります。

■ フィジカルを構成する2層の運動特性

まずは、鍛えるべき「材料(運動特性)」を整理しておきましょう。

【基礎的運動特性】

鍛えやすく、単体で測定しやすい“土台”

①筋力(Strength)

②可動性(Mobility)(関節の動きやすさ・安定性・制御)

③持久力(Endurance)(筋・心肺のスタミナ)

④スピード(Speed)(素早く動く力・反応時間)

【統合的運動特性】

複数の要素が組み合わさって発揮される“応用力”

①瞬発力(Power)
└ 出力系(爆発力・RFD)、反応系(SSC・EMD)、神経系(制御・協調)

②コーディネーション(タイミング・順序・筋間連携)

③バランス・感覚統合能力(視覚・前庭覚・体性感覚の統合)

④認知・判断・反応

■「何をどれだけ鍛えるか」は目的と状態でも変わる

同じ「ジャンプ力を上げたい」でも、

・20代の競技者

・40代・既往歴ありの一般の方

ではアプローチも配合もまるで違って当然。

・若くて無傷の場合、瞬発力・SSC・スピード・RFD(高負荷トレ可)

・中年で膝に不安ありの場合、可動性・安定性・股関節主導性・エキセントリック筋力重視→ジャンプ練習のボリュームは減らし、耐衝撃性や関節制御に配慮した設計が必要になります。

■ 目的が違えば、特性の配合も真逆になる

極端なスポーツを例にとると、その違いがはっきり見えてきます。

【例①:パワーリフティング】

筋力最重視。持久力・スピードの優先度は低い

【例②:マラソン】

持久力や一定レベルまでの筋力重視。筋肥大の優先度は低い

【例③:バレエ】

可動性・バランス・コーディネーション重視。美しい制御が重要。

【例④:総合格闘技(MMA)】

全特性を一定レベルに統合。万能型が求められる。

また、同じ競技でも“自分のプレースタイル”で配合は変わります。

たとえばバスケットボール。

● ゴール下で競り勝ちたいセンター

→筋力・体重・下半身の安定性が優先

● 相手を抜きたいガード

→スピード・瞬発力・認知判断が重要

● ボールを奪われる課題がある選手

その原因は?

①接触に弱い?→筋力不足かも

②タイミングがズレる?→コーディネーションかも

③相手の動きを読み違えてる?→認知判断かも

④ドリブルやパス技術が低い?→バスケットボールの得意的技術不足なので、そもそもトレーナーの領域ではないかも

■ カレーの好みで例えるなら…

あなたが求めるカレーが「甘口・野菜たっぷり」なのに、
一生懸命「辛口・肉ゴロゴロ」レシピで頑張っても、理想からは遠ざかるばかり。

トレーニングも同じです。
目的に対して“どんな配合で作るか”を間違えないことが重要なんです。

■ トレーニング設計=「目的・現在地・配合」の三位一体

①目的

何をできるようになりたいのか?

②現在地

年齢・怪我・回復力・制限など

③必要な特性

自分に必要な運動要素を選ぶ

■ まとめ:あなたに合った「フィジカルのレシピ」を

筋力、スピード、持久力、瞬発力…
どれも“材料”としては大切。

でも、全員が同じ配合でうまくいくわけではない。
あなたの「目的」と「現在の身体」に合わせて、最適な比率と順番で鍛えること。

それが、無駄なく、安全に、そして確実に成果へ近づくための鍵です。

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