ブログ記事

すべては一つの動きを学んでいる──

ドラゴンボールから学ぶ

“トレーニングの考え方”

ドラゴンボール超のワンシーン。

ヤードラット星の長老ピバラ様が新しい技を習得するための修行に訪れたベジータにこう語ります。

「すべては一つのことを学んでいるにすぎない。術が生まれるのは、その過程だ」

この言葉が、私の中でずっと残り続けています。
“トレーニングを教える”とは何か?

という問いの核心に触れていると感じたのです。

「やり方」ばかり追いかけてしまう。

スクワットやベンチプレスの重量を上げたい。

ジャンプを高くしたい。

早く走りたい。

痩せたい。

だから、

「トレーニングのフォームやメニュー構成」

を探し始める。
でも、それらを実施してもなぜか成果が出ない。

なぜか。

“動き方の基本”の習得が抜けていると、どれだけ「コツ」や「やり方」を探しても根本的には身につかないからです。


型(トレーニングフォーム)やメニュー構成は

“過程の中での一つの結果”

でしかありません。

「すべては一つのことを学んでいるにすぎない。術が生まれるのは、その過程だ」

のトレーニングでの置き換え

これをどう解釈すればいいのか?

私はこう考えます。

それは──身体を思った通りに動かす能力を育てること。
その前提として、

・自分の状態に“気づく力(身体所有感を始めとする自己認知・感覚知覚)”を高めること。

・基本的な動き方を精度高く身につけること。


「思考と身体が一つになる状態」こそが、動作の完成に向かう最初の“鍵”なのだと考えています。

術(良いトレーニングフォームや日常・スポーツ動作)が生まれる「過程」──それは5つのステップからできている

ただトレーニングフォームを練習するのではなく、
“術(良いトレーニングフォームや日常・スポーツ動作)”を生み出すための基本のステップを習得することが大切だと考えています。

【1】気づく(知覚・感覚)

→ 今の自分の体がどう動いているかを感じ取る機能(身体所有感や運動主体感などの固有感覚、視覚、前庭感覚)

【2】動かせるようにする(可動性:モビリティ)

→ 関節や筋肉が適切な範囲でスムーズに動く※呼吸含む

【3】支える(安定性:スタビリティ)

→ 動くときに、安定させるべき部分をしっかり支えられるか※ジョイントバイジョイントの考え方から

【4】正しく組み立てる(運動パターン)

→ 「どこから、どう動き始めるか」の順番が整っているか

【5】1〜4を様々な動きで使えるようにする(統合・パフォーマンス)

→ 実際の種目(トレーニング種目やスポーツ動作)で自然に発揮できるか?

“この5つを踏まえたトレーニングフォームやスポーツ動作”

をつくることで、

初めて「再現性」と「安定性」をもった術=トレーニングや動作種目のフォームというスキル

が生まれます。

この考え方は、動作評価の国際基準である

Functional Movement Systems(FMS)や、Shirley Sahrmann、Gray Cookらが長年説いている基本的考え方です。

Koafitのトレーニング理念も、この哲学と同じです。

Koafitでは、「回数をこなす」「重さを上げる」ことよりも、
“動きの質”を高めることに全力を注ぎます。

たとえば、スクワットを例に挙げても、

  • 肩が安定しているか(肩甲帯の安定性)
  • 足でしっかり地面を踏めているか(足部の支持性)
  • 骨盤周りが安定して腰が反りすぎていないか(腰椎骨盤帯の安定)
  • 胸周りを張れるか(胸椎の分節的な伸展)
  • お腹周りにバランス良く圧をかけられているか(腹圧)
  • 動作の始まりにバラツキがなく、スムーズに連動しているか(反応速度・タイミング) 

など

こうした見えにくい部分を一つひとつ整えることが、
結果的に「フォーム」を洗練させ、より良いパフォーマンスを作っていきます。

これは

「筋力の最大化」

ではなく、

「良い動きの再現性の最大化」

を重視した考え方です。

全ては「一つのこと」から生まれている。

だから僕は、トレーニングを教える時、こう考えてお客様に伝えています。
“どのトレーニングでも動作の基本がベースにあることを理解する”

ことから

“出来なかったことが出来るようになる”

のすべてが始まる。


歩いているその一歩。
イスから立つ、その動き。

何気ない動きの中にこそ、動作の基本が集約されていると思います。
術(トレーニング種目や日常・スポーツ動作)を身につけたいなら、まず“身体動作の基本”と向き合うこと。
それが、あなたの動きを根っこから良くしていきます。

【参考にした理論・書籍】

  • Shirley Sahrmann, Diagnosis and Treatment of Movement Impairment Syndromes
  • Gray Cook, Movement: Functional Movement Systems
  • Michael Boyle, Advances in Functional Training
  • NSCA-CSCS, National Strength and Conditioning Association
  • FMS, Functional Movement Screen

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